磁場は電子のスピンや軌道運動に直接作用するため、磁性体に磁場を印加すると磁化が変化し、金属の場合には電気抵抗が変化します。物質中で複数の自由度が結合した系では、磁場の印加によって、結晶構造・電気分極・色・温度など、様々な物理的性質が変化します。複数の自由度による非自明な結合によって現れる効果を交差相関効果と呼びます。このような交差相関効果は物理として興味深いばかりでなく、実用面でも物質の新たな可能性を開くものとして大きな注目を集めています。

 磁気秩序が電気分極を誘起するマルチフェロイック物質では、電気分極の磁場制御やスピンの電場制御が可能になります。電場で制御可能な磁気メモリーに使用できれば、消費電力を大幅に低下できると期待されています。スピン系と格子系が強く結合した系では、磁場で構造相転移が誘起される際に、物質の温度が大きく変化する現象(巨大磁気熱量効果)が見出されています。磁場を用いた物質の温度変化は、これまでの限界を超えたエネルギー効率を持つ熱交換器として使えることが知られており、将来の水素液化などの応用に向けた研究が進められています。

 私たちは強磁場を用いることで、通常は見落とされてしまうような交差相関効果を顕在化します。強磁場下で様々な物理量を正確に測定することで物質の持つ新しい可能性を探索し、その背景にある物理を研究しています。

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